麦畑でピクニック2022

2022年6月13日(月曜日)
滋賀県蒲生郡日野町

パン作りをされる方に、日本でディンケル小麦の生産者さんは誰??と質問したら、帰ってくる答えは「大地堂の廣瀬さん」ではないでしょうか。

今から17年前の2005年に販売目的でディンケル小麦の栽培に取り組み、栽培技術を模索されながら2007年にディンケル小麦の収穫に成功された国内におけるディンケル小麦栽培のパイオニア大地堂の廣瀬敬一郎さん。

今でこそ、日本のさまざまな場所でディンケル小麦が栽培されるようになりましたが、日本国内での始まりの場所は滋賀県蒲生郡日野町の廣瀬さんの畑です。


そもそもディンケル小麦って?

ディンケル小麦は、コムギ属で現在広く利用されていて普通のパン用小麦と同じに分類され、パン用小麦の原種にあたる古代穀物です。
麦粒は固い殻に包まれており、この長い歴史を持った昔ながらの穀物です。
ドイツ語で「ディンケル」、英語で「スペルト」、フランス語では「グラン・エポ―トル」と呼ばれ、日本ではまだまだ馴染みの薄い小麦品種です。

麦畑でピクニック。

畑を見て。

生産者である廣瀬さんや、一緒に参加された方の話を聴いて。

ディンケル小麦で繋がる。

滋賀県日野町の大地堂さんを訪ねてきました。
私と同じ様に廣瀬さんのディンケル小麦に魅せられた方が、東は埼玉県から西は愛媛県から畑に集まって楽しいひと時となりました。

開会と同時に参加者の自己紹介があり、隣になった方々と挨拶しながら、廣瀬さんが作ってくださったディンケル小麦のピッツァと、愛媛県から参加されていた BOULANGERIEPOUCE DE CHEF 得居シェフが前日にお店で焼いて持ってきてくださったディンケル小麦のパン、京都のキセツノネイロさんのディンケル小麦のお菓子で舌鼓。


風に揺れるディンケルの穂。

畑に目をこらすとディンケル小麦以外の様々な食物が共生していることに気づきます。

廣瀬さん曰く
「昔は田植えの時期が今より遅く、肥料の代わりに田んぼにレンゲを植えていた。」

わたくし井上も幼い頃、春になると近所の田んぼがレンゲ畑であったことを覚えております。

レンゲなどのマメ科の植物には根粒菌という特殊な微生物が共生しています。
根粒菌が共生していない植物は、土の中にある窒素しか利用できないのですが、マメ科の植物は共生している根粒菌が空気中の窒素も取り込んで栄養源として供給してくれるのです。

僕のおじいちゃんぐらいの世代は、農業をしながら、現金が必要になれば近くの製材所などでアルバイトをさせてもらうといった生活だったので、肥料にはお金をかけられなかった。

だから、肥料の代わりにレンゲなどを植えていたのです。
昔は養蜂家さんがレンゲなどの種を農家に配り、農家さんがその種を畑に撒いて花が咲けば、養蜂家さんが蜂蜜を採取する。
蜂蜜の採取が終われば、花が種になる前に畑に漉き込んでレンゲを肥料としていた。
理にかなった農法です。

■廣瀬さんのミツバチの巣箱
畑の周りをブンブンと元気に飛び回っていました。

今後、様々なことにチャレンジしながら10年15年といったスパンで粒を食べて美味しいものを育種していきたいです。
そうすることで、次の世代に選択肢の一つとして繋げていけるのではと考えています。


来週になれば、本州で収穫していない麦は、うちのディンケル小麦だけでしょうね。

うちの畑のディンケルはようやく、花が咲き出しました。

収穫まであと少し。

あとは収穫時の雨に打たれないことを願うばかりであります。

世代を超えて引き継がれていくこと。

できれば、今の環境より良くして繋げたい。

今やらないといけないことは、「今やる。」

すぐにできなくても、どうすればできる様になるのか考えて行動する。


ディンケル小麦を育てることで遠い未来にこうなっていたいと言う絵を描き、困難に立ち向かう廣瀬さんの想いを感じさせていただいた2022年の「麦畑でピクニック」でありました。

楽しい時間をありがとうございました。